△第78号: 風雪のフォースト・ビバーク (ベン・ネビス) (中編)
- 発行日
- 2008/09/09
- 発行者・筆者
- まさ (坂野正明)
まさです。
前回に続き、ベン・ネビス山で氷点下の吹雪の中での フォースト・ビバークを余儀なくされた翌朝の話を 主題に据えます。
あわせて、「ビバークの奨め」の後編も書いています。 めくるめく(?)ビバークの世界へのご招待です!? お楽しみ下さい。
目次
登山記録編 〜〜 風雪のフォースト・ビバーク (ベン・ネビス) (中編) 〜〜
(前号からのつづき)
そして翌朝。
無事、朝を迎えて、外の人々(クライマー)の声で目が覚めた。 10時。
昨夜は夜中に何度か起き出して、ツェルト(=テント)を調整する必要があった。 小屋の壁に遮られているとは言え、回り込んできた風にツェルトの壁が めくれあげられ、風雪が入り込んでくることがあったためだ。 とは言え、10時すぎまで眠っていたわけだから、よく眠れたと言っていい。 防水透湿シュラフカバーのおかげで、特に濡れてもいない。
さて、これから、どうしますか。 テントは応急処置はしているとは言え、半分壊れている。 突風には耐えられないだろう。それに二人とも疲れている。 やむを得ない。今日は一旦下山して、下界でどこかにゆっくり泊まって 疲れを癒した後、(4日間の予定期間の 3日目の明日に)日帰りで登りに来るか?
そんなことを考えている折、クローディアが提案してきた。
「(僕らがビバークした)ここにテントを張ったらどうかしら」
ふむ、確かに、ここ(=小屋の壁の風下側)ならば、風からは最も守られている。 ぎりぎりテントを張れるだけのスペースもありそうだ。
ではそうしますか? 君の積極思考には感動です、クローディア!
この場だと、地肌が見えている場所が少なくないので、ペグの半数以上は
地面に直接打込める。加えて、小屋の金属構造も支点としてちょっと 借用させてもらう。褒められた行為ではないが、泊めてくんなかったん
だから、それくらいは勘弁して頂きましょう (笑)。 クローディアと二人、工夫して、できるだけの耐風能力が出るように
テントを張っていく。
「こういうのも悪くないわねぇ。私、結構楽しんでるわよ」とクローディア。 真の登山家かくあるべし、お見事です!
こうして無事、天幕設営できた。昨夜よりは風も弱いし、 なんと言っても小屋に遮られているのが大きいから、もうまず大丈夫だろう。
現在、14時すぎ。 ルートに出向くには既に遅過ぎる。とは言え、僕が当初思ったように 下山するよりは、はるかに成算的だった。 雪上に乗り出して、4時間弱、雪上訓練に費やす。 明日への準備万端!
(つづく)
議論提起編 〜〜 ビバークの奨め (その二) 〜〜
(第77号「ビバークの奨め (その一)」からのつづき。)
ビバークする羽目になった場合、 事前のビバークの経験は、非常に有用です。 未経験ながら死なないはずと信じたい「予想」「願望」と、 どれだけ快適か(不快か)相当程度に知っていて少なくとも死ぬことはない という「確信」「知識」との間には大きな隔たりがありますから。 僕自身は、今まで、何度フォーカスト・ビバークしてきたか もう覚えていません。雨の中、雪の中と色々な条件も経験してきました。 近年は、一人ならテントは不要、と思うように なっています — 山行後に洗うのも手間だし(笑)。 おかげで、今回、フォーカスト・ビバークは初めてだったとは言え、 そして強風氷点下の条件だったとは言え、平常心で準備して眠りにつくことが できたものでした。
僕も初めての時は怖かったものだったのをよく覚えています。 僕の初めての(フォーカスト)ビバークは、真冬の単独行の最中で、 夜中に幻聴を聞いたものでした。僕の友人は初めての (単独フォーカスト)ビバークの最中、夜中にふと怖くなって車に逃げ込んだ、 と言ってました — 別に何ら危険があったわけでもないのですが。 でも、一度経験してしまえば、安全性に確信を持てただけでなく、 山の世界が格段に広がったものでした。 荷物がずっと軽く済むので、行動範囲が広がります。 どこでも寝られるので、行動時間が広がります。 たとえば、他の登山客が山から降りてくる時間に敢えて山に登りに入り、 一晩、山を目一杯楽しんだ後、翌日、他の登山客が息を切らして山に登ってきて 混雑してくる前に余裕で下山できたりします。
ビバークには、そう大それた装備は必要ありません。不時露営なん だから、当然ですけど。 寝袋に防水透湿性のシュラフカバー、それにマットがあれば それなりに快適な夜がほぼ約束されます。 ツェルトまであれば、贅沢な一夜が過ごせるでしょう。
もっともビバークは、装備もさることながら、技術が大きくものを言うと思います。 ありあわせの条件で、いかに工夫して快適な睡眠環境を作れるかという話で、 これは相当程度、経験を積み重ねることで自分なりのやり方を 会得するものかも知れません。
とは言え、人間、そう滅多なことでは死にません。 端的には、怪我や病気が無く、暖かくして、水分食糧が十分あるなら、 寿命まで生きられるわけですから。 経験の無い方は、まずは身近で客観的に見て絶対安全なところ、 たとえばその気になればいつでも車に逃げ込めるようなところから ビバークを体験してみられてはいかがでしょうか? もし不安なら誰かを誘って、手でもつないで眠るのも一興かも?! 今後の山行がより安心で安全で豊かなものになることでしょう!
△この文章を、前回と併せて以下にも載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/doc/bivvy.html#recommend
Webページ更新情報
- この記事は、以下にも載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/magazine/backnumber/eu078.html - 「スコットランドの山情報」のページの
「ベン・ネビス山」の項を改訂しました。 特に、北壁駐車場と北壁へのアプローチについて改訂・加筆しました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/info/scotland.html#bennevis
次回予告
次回は… 「風雪のフォースト・ビバーク (後編) — そして登攀」
See you later!
◎発行: まさ
WWW page: http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/
email: alpin…@s…
このメイルマガジンは以下のサイトのシステムで発行しています。
- めろんぱん
- http://www.melonpan.net/
- melma!
- http://www.melma.com/
- まぐまぐ!
- http://www.mag2.com/
メイルマガジンの登録・解除は以下のページからどうぞ。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/magazine/
お便りについて。
歓迎します! お便りはマガジン上で紹介させてもらうかも知れません。 ハンドル名(と差支えなければ居住都道府県)をお書き添えください (無指定の時は平仮名略字表示にします:「世界の環境ホットニュース」 方式)。逆にもし紹介して欲しく無い場合はその旨、明記下さい。
