▲欧州的登山生活▲

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第35号: ピーク地方の定番岩場(フロガット・エッジ)

発行日
2006/10/03
発行者・筆者
まさ (坂野正明)

まさです。
3週間の御無沙汰でした。予定通り、日本に一時帰国して、 その間、二人のグループで槍穂縦走に行きました。ちょうど台風13号にぶつかって しまったのが、運が悪かったところでした。結局、上高地から 西穂経由で奥穂まで進んだところで、下山しました。下山前日の晩は、 奥穂山荘横の天場で、テントがよく揺れたものでした。まぁ、おかげで 西穂〜奥穂の稜線には人がほとんどいない静かな山行が楽しめた、という ものでしたが。一番厳しいところではほとんど雨に降られなかったのは、 不幸中の幸いでした。

さて、今日は、先の冬に行ったピーク地方の岩登りの記録を中心とします。 山のスケールでは日本の山々に遠く及びませんが、厳しい倫理感に 鍛えられた英国伝統岩登りは趣があって悪くありません。 関連して、英国伝統登攀とハーケンに ついて解説しています。 お楽しみあれ。

目次


登山記録編 〜〜 ピーク地方の定番岩場(フロガット・エッジ) 〜〜

昨日に引続き、ピーク地方、今日は定番 フロガット・ エッジ(Froggatt Edge)へ。 定番と言いつつ、いや定番だからか、僕が最後に来たのは、 1年以上前になる。

今日の僕のハイライトは、HVS の Chequers Crack。 きれいなクラックが縦に走り、時折かぶっているルート。 しかし、クラック(地上 2m ほど上)にたどり着いて、最初の中間支点を 取った頃には、早くも結構消耗。クラックに取り掛かるも、 ジャミングもうまく極まらず、レイバックも不安定。 見た目よりいやらしいクラックではないか。 そこで、休憩すべくクライム・ダウンしようとするも……落ちてしまった。

安全に登るには、もう一つ上に中間支点を取りたいところだが、それも 結構な仕事量。 結局、地上に降りたり、ロープにぶら下がって休みを入れた後、 極まりそうなナッツにぬんちゃくとロープまで通して、中間支点を取ることだけを 目的に登る……極まった!

さぁ、中間支点は十分。これで後は、登るだけだ。中間点に立派なレッジが 見えているので、そこまで登れば休憩できる。つまり、目の前のクラック 2〜3 メートル(多くの人にとって、ここが核心らしい)さえクリアすればよい。 トライ。再トライ。再々トライ……。

だめだった。すでに力を消耗し過ぎたか。力尽きて、ここで諦める。 このルートは、中間支点を取るのが楽ではない。(クラックだから)極める 場所自体は多くても、極めるために休むような場所がないから。 (登った)ドムに言わせると、 「下でスポットする人を数人集めて、ボルダリング・マットを敷いて、 中間支点は二つのみで上まで一気に抜ける、それがコツ」。 それは怖いかも……。僕としては、もっとスタミナや力を鍛えて、 もう少し安全に登りたく思うところだ。いずれにせよ、 残念ながら今日の僕の手にはおえなかった、ということだ。

こうして、一つ宿題が残った。でも 今日は、それなりの数登れて、楽しめて、悪くない一日だった。 次こそは、Chequers Crack を登ろう!

△以上、記録の一部。全文は、以下に載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20060219_froggatt.jis.html


登山ミニ知識編 〜〜 英国伝統登攀とハーケン 〜〜

(前号(第34号)「伝統登攀の中間支点(基本)」からのつづき。)

登攀またはロッククライミングと言えば、多くの人の印象は、

「肩に食い込む重い荷物を担ぎ、玉のような汗を流しながら、 ハンマーでもってハーケンを岩に叩き込み、 細いザイル 1本を命綱にして、命を賭けて、垂壁を登る」

というところでしょうか(「ファイト〜!」「いっぱ〜つ!」なんて叫びながら? (笑))。 僕が実際に岩登りを始める前の印象はそんなものでした。

現実には、英国の伝統登攀では、上の表現のうち、正しいのは、(多くの場合) 「垂壁を登る」ところだけです。英国は涼しいから、そんなに汗はかきませんし。 重い荷物持って登るような不経済で自虐的(?)なことはしませんし。ザイルは 2本が標準ですし。英国の少年少女の何割かが岩登りの経験があるような現在、 まさかそんな年若い彼らが命を賭けて苦悶の表情で岩を登っているわけ ありませんし。

そして、今回のテーマは、「ハンマーでもってハーケンを岩に叩き込み」です。 ここで、ハーケンとは、岩に打ち込む、釘のような金具のことです。 頭の部分に「目」があって、カラビナやロープを掛けられます。 ハーケン(Haken; 独語)の日本語訳は「鉄釘」でしょうか(新田次郎の本では そうありました)。仏語(英語)では「ピトン(piton)」、英語では「peg」と言います。

(注!) モチズキ社が出しているエクスパンジョン・ボルトは、 「ハーケン」という名称で売られています(した?)。これは「ボルト」であって、 「ピトン」とは異なります。以下では、混乱を避けるため、「ハーケン」という 用語を使わず、「ピトン」で統一します。

ピトンは、先の方が細く、根本に近付くにつれ太くなっている鉄釘です。 先が細いと言っても、鋭く尖っているわけでは全然ありませんし、 その必要もありません。だから、岩ならどこにでも打ち込める……ような 魔法の釘では無くて(一方、「ボルト」は、そうして使う物です)、 元々ある岩の割れ目(クラック)にハンマーで打ち込むものです。

使用法は(原理を説明するだけなら)いたって簡単です。ハンマーで丈夫そうな 岩の割れ目に向かって叩き込む、それだけです。根本の方が太いから、 (割れ目のサイズがそれなりの範囲内にあれば)どこかで止まって、固定される、 という原始的な原理です。そして、それが、登攀の中間支点として(あるいは 援助登攀の前進支点として)使われるわけです。

このピトンの使用には、二、三、重大な問題点があります。 結果、現代の少なくともフリークライミングでは、 「ハンマーでもってハーケンを岩に叩き込み」 のは最早過去の話になりました。 次の機会では、その問題点を突っ込んでみます。お楽しみに。


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次回予告

次回は… 「歴史を感じる冬の歩登攀(クライマーズ・トラバース)」

See you later!


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