△第67号: 「ナチュプロ」に挑戦の日本人登山家 (スタニッジ)
- 発行日
- 2008/02/19
- 発行者・筆者
- まさ (坂野正明)
まさです。
しばらく御無沙汰しました。この 3週間、主に週末に 湖水地方、スコットランド、ピーク地方と冬山から岩登りへと
渡り歩いていて、いわば本メルマガの「取材」に忙しかった ものでした(笑)。運転が嫌いな僕には、 合計して 2500 km
を超えるドライブには参りましたが、 でも、山を楽しんできたので、本望ではあります。
さて、今日は、先の 8月に英国を日本から訪れた山仲間(松ちゃん)と一緒に 「ナチュプロ」の本場英国で岩登りに行った時の記録から始めます。 「ナチュプロ」とは、ナチュラルプロテクション(natural protection) の略称。つまり、ボルトやハーケンなどの岩を傷め、時に永久的に残される 道具ではなく、ナッツやカム類、あるいは単なるスリングなどで支点を作っていく 方法のことです。
松ちゃんは冬山からヨセミテの巨大壁までばりばりこなす経験豊かな 正当派登山家ながら、聞けば、意外にもナチュプロの経験は
限られるとか。人口登攀では使ったそうですが、確かに人口登攀用途と 墜落用の支点用途では必要とされる信頼性が桁違いですからね。
まぁ、せっかく本場に来たんだから、その象徴とも言うべき スタニッジ・エッジで、楽しんで頂きませう(ふふふ)。
併せて、「フリークライミングの難易度」の解説のつづきも 書いていますので、どうぞ。
目次
登山記録編 〜〜 「ナチュプロ」に挑戦の日本人登山家 (スタニッジ) 〜〜
今英国に出張で来ているんだけど、と松ちゃんから突然のメイルが入る。 それは急な話で。 では、せっかくだから明日、ピーク地方に岩登りに行きますか? えっ、そんな予定では……何も道具持ってきてないし。 道具ならなんでもお貸しできますがな。と聞けば、俄然乗り気の松ちゃん。 さすが、そう来なくちゃ! いざ、スタニッジ・エッジへ!
せっかくですからリードして頂きますか。手始めに 26m とスタニッジほぼ最長の Severe の三つ星ルート Bishop's Route などいかが? 僕が広げた登攀用具からナッツとフレンズとを取るものの、 ヘックスは置き去りにして、リード開始。 さすが、難なく上まで登り抜ける。
では次はレベル・アップして、22m の三つ星 VS、 Inverted V にしますか。 立派な縦クラックが走っていて、中間支点も十分そう。
松ちゃん、縦クラックを登り切ったところで、 中間支点を探すも芳しくない様子。いや、申し訳ない、ここは
登る前にヘックスを勧めておくべきだった。クラックの大きさから 見て、ヘックスが重宝するのは下から見ても明らかだったから。
でも後の祭。今、できることは……
さらに登る! ちょっとランアウト だから落ちないでね……。そこで待望の支点を極められて、いざ核心へ。
核心自体はごく簡単そうに登ってくれた。お見事。
この時点で、遠くにあった雨雲が移動してきているのが見えたので、 ここでお開きとする。駐車場に着く頃にはそれなりの雨足に。 でも、そんな結構な雨足の中でさえスタニッジの 岩場ではまだ登っている人々がいるのを見て、松ちゃんは感銘を 受けた様子。丸一日登れなかったのは残念ではあるものの、 ある意味、非常に英国的な一日、ということでよかったのでは ないでしょうか (笑)
△以上、記録の一部。全文は、以下に載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20070818_stanage.jis.html
登山ミニ知識編 〜〜 フリークライミングの難易度 (その六) 〜〜
(第61、 63号 「フリークライミングの難易度 (その五)」からのつづき。 すいません、61号と 63号とで同じ説明がかぶってましたね……)
前回(第63号 の(その五))で、 異なる形容難易度に対して技術難易度には大いに重なりがある (同解説の表参照)、 と書きました。今回はこの点をもう少し突っ込みます。
まず、端的には、 形容難易度が同じ時、技術難易度が低いルートは、危険(つまり (「ナチュプロ」の!)中間支点 が取りづらく、落ちると危険)か、その難易度が長く続くルートです。 逆に技術難易度が高いルートは、安全か、その難易度が要求される場所が スポット的(で、多分安全)なことを意味します。だから、E1 5c という ルートもあれば(ハードだけど安全?)、E2 5b(相対的に易しいけど危険)という ルートも存在するわけです。もしトップロープなどで安全が確保された上で 登るなら、技術難易度から判断して、おそらく後者の方が易しいはずです。 一方、リードするなら、後者は悪夢になりかねません。
前回書いた対応表はその中で、標準的と思われる組合せをまとめたものです。 現実には、各形容難易度につき 技術難易度がこれより一つ上下のルートは稀に存在します。 たとえば、有名な (Froggatt Edgeの) Sunset Slab と いうルートは HVS 4b です — つまり、(HVS という形容難易度に しては)非常に低い技術難易度(4b)が与えられています。同ルートは、 最後の中間支点がルートのほぼ半ばに取れて、しかもその中間支点は あまり信用できない、にも関わらず、核心(最も難しい場所)が最上部にある、 というしろものです。 だから、核心で落ちたら、地上まで落下する可能性が相当ある、という次第。 実際、あるガイド本には、 「この伝統のルートが、医学の教科書に素晴らしい骨折の見本を提供してきた」 と書かれています。一方、HVS 6a というルートもたまにありますが、 そういうルートの多くは、核心が地上すぐ上なので、落ちても、 入院するほどの怪我は負わない、というものですね(踵の骨折は勘定に入らない)。
ここまで、1ピッチのルートだと暗黙のうちに仮定してきましたが、これが マルチ・ピッチだと、形容難易度はルート全体で一つ、技術難易度は ピッチごとに与えられます。たとえば 3ピッチのルート HVS 4a,5b,4c など。 この場合、よほど持久力が要求されるようなルートでない限り、 ルートの形容難易度は最高難度(または危険度)のピッチが基準になるのが普通です。
ここまで、フリークライミングの難易度について最初に述べた 第52号の記事 から 6回にわたって解説を続けてきました。 次の機会では、フリークライミングの各国の難易度間の 「対応関係」をまとめて、このシリーズ解説の総さらいとしたいと思います。 (……つづく)
Webページ更新情報
- この記事は、以下にも載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/magazine/backnumber/eu067.html
次回予告
次回は… 「ブリテン本島最高の痩せ尾根歩き」
See you later!
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